前回1〜2巻を読んだので、続きとなる第3巻も読んでみました。今回も、笑いあり・学びあり、そして身につまされる展開がたくさん……。
『ひとりでしにたい』1~2巻の感想はこちら
漫画『ひとりでしにたい』第3巻では、鳴海の両親の熟年離婚問題が取り上げられています。
「親が離婚するかどうか」という話が、「将来の介護」にどう関係してくるのか──意外と、他人事ではありません。
※本記事は『ひとりでしにたい』第3巻の感想を含み、一部の内容に触れています。未読の方はご留意ください。
熟年離婚は他人事じゃない|親の離婚と老後の介護を考える
本巻では、主人公・鳴海が両親の「熟年離婚」に揺れ動きます。
介護とは直接関係ないテーマに見えますが、熟年離婚と老後の生活、そして親の介護問題は、実は密接に関わっていると気づかされる内容でした。
私自身、親の介護を経験した身として、「他人事じゃない」と思わずにはいられませんでした。
今回は『ひとりでしにたい』第3巻の感想を交えながら、熟年離婚がもたらす現実と、その先にある介護のリスクについて考えてみました。
両親の熟年離婚、それは「子ども世代の問題」でもある
本巻の中心は、鳴海の母親が離婚を考えているかもしれないという展開です。
鳴海は両親のために離婚を止めようとしますが、同僚・ナスダ君から「本当に両親のため?自分のためでは?」と問われます。
それを聞いて、私はドキッとしました。
自分の親には仲良くいてほしい。でも、別々に暮らされると将来の介護が面倒になる──
正直、そんな気持ちは少なからず誰にでもあるのではないでしょうか。
私も、母ひとりの介護でも本当に大変だったので、「もし両親が別れて、それぞれ別の場所で老後を迎えたら…」と想像すると、頭が痛くなります。
離婚後の生活は、意外と現実的じゃない?
作中では、離婚後の仕事として「浄水器を売る」と話す場面があります。
こうしたマルチ商法のようなビジネスが、離婚後の高齢女性に勧められるケースもあるそうです。
離婚弁護士のあいだでは、こうした話を「水商売」と皮肉って呼ぶという場面で、鳴海が「世界一笑えないギャグだ」と言うシーンには、思わず吹き出しました(笑)。
でも、それと同時に怖さも感じました。
高齢者の孤立や、情報弱者を狙ったビジネスが現実に存在しているからです。
私の母も、鍵のトラブルで高額請求されたことがあります。(詳細は以下の記事で紹介しています)
「家庭=会社」に例えた説得劇がユニーク
父親との話し合いの場面では、ナスダ君も同席し、「家庭」を「会社」に例えて家族内での役割を説明します。
「家の置物にならないように」というアドバイスが印象的でした。
料理の負担を減らすために、宅配弁当を活用する案も出てきます。
今は高齢者向けサービスがかなり充実していますし、「どこにコストをかけて、どう支出を抑えるか」という視点は、介護にも通じると感じました。
ただ、「家庭を経営にすり替える」話に対して、鳴海が「物は言いようだな…」というセリフには、私も思わずうなずいてしまいました(笑)。
「調べる気」がないと、老後も介護も失敗する
作中でもっとも印象に残ったのは、「調べる気がなければ、情報は入ってこない」という場面です。
本当にその通りだと思いました。
介護もそうでしたが、必要なサービスは向こうからやってきてはくれません。
自分で動いて調べて、ようやくたどり着ける。それが現実です。
おわりに:熟年離婚が変える「家族の形」と介護のかたち
熟年離婚は夫婦の問題に見えますが、親の介護を経験した子ども世代にとっては、「将来の負担」に直結する重大なテーマです。
仮に離婚しても、どちらか一方だけを見れば済むとは限りません。
それぞれが別の土地で、別のタイミングで要介護状態になるとしたら…。
「家族のかたち」そのものが変わっていく時代なんだと、改めて感じました。
『ひとりでしにたい』第3巻は、笑いあり・学びありの良作です。
そしてなにより、「調べる気がすべてのはじまり」。
これは、介護にもお金にも共通する、大切な教訓だと思います。
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