「台所を見れば、認知症の予兆がわかる」
そんな言葉を、最近の記事で見かけました。料理には記憶力や注意力、判断力、段取り力など、さまざまな認知機能が関わっているため、認知症の初期にはその変化が表れやすいのだそうです。たとえば、砂糖と塩を間違えたり、鍋を火にかけたまま忘れてしまったり――。一見、うっかりミスのように見えても、実はその裏に認知機能の低下が隠れている場合があります。
私の母の場合は、「料理」ではなく「買い物」でそのサインが出ていました。
ある日、母の家に行って冷蔵庫を開けてみると、同じ商品(ビール)がずらりと並んでいたのです。
息子の私が来たときのため買っておいたという母でしたが、あきらかに数が多すぎました。
どうやら「あること」を忘れて、同じものを何度も買ってしまっていたようです。
買い物の流れが、うまくいかなくなっていた
料理と同じように、買い物も「記憶」や「段取り」が求められる作業です。
冷蔵庫の中身を確認して、「何が足りないか」を考え、買い物メモをつくる。そして、スーパーで必要なものを探して買う――。
この一連の流れには、思っている以上に多くの認知機能が関わっています。
母の場合、買い物リストを作らなくても頭の中で管理できていた時期が長かったのですが、認知症が進行するにつれて、その「流れ」が少しずつ崩れていったのだと思います。
「足りないと思っていたものが、実は家にある」
「昨日買ったことを忘れて、また同じものを買ってしまう」
そんなことが何度も繰り返されていました。
「おかしいな」と思ったら、その違和感を大切に
当時の私は、冷蔵庫を見ても「ちょっとおかしいな」くらいの感覚でした。
認知症という言葉は頭をよぎったものの、「年のせいかな」「うっかりしただけかも」と自分に言い聞かせていました。
けれど今思えば、あのときの違和感こそが、最初のサインだったのだと思います。
参考にした記事の中では、「料理の流れがうまくいかなくなったら要注意」と書かれていましたが、私は母のケースを通して、買い物や家事、日常のちょっとした行動にも同じことが言えると実感しています。
認知症の進行は、ある日突然ではなく、日々の暮らしの中に少しずつ現れてくるものです。
台所、冷蔵庫、洗濯機、玄関――。
生活のなかで「いつもと違うな」と感じたとき、それは小さくても大切なサインかもしれません。
早めの受診が安心につながる
母はその後、もの忘れ外来を受診し、アルツハイマー型認知症と診断されました。
認知症は、早期発見・早期対応が何よりも大切です。
「おかしいな」と感じた時点で受診することで、治療やリハビリによって進行を遅らせることができる場合もあります。
家族にとっても、これからどう支えていけばいいのかを考えるきっかけになります。
まとめ
冷蔵庫の中に同じ商品が並んでいたあの日、私はようやく「母の様子が少し変だ」と気づきました。
当時は深刻に考えなかったものの、今振り返ると、それが母の認知機能の変化を知らせてくれた大切なサインでした。
買い物も料理も、少し手助けすれば「まだできる」ことがたくさんあります。家族がそのサインに気づき、早めに行動できれば、本人の生活の質を守ることにもつながります。
小さな違和感を見逃さず、「おかしいな」と感じたら、ぜひ一度専門医に相談してみてください。
その一歩が、これからの介護を少しでも穏やかにする第一歩になるはずです。


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