「介護施設入ろうよ。お金の心配はいらないから」
そう言ったんですが、烈火のごとく怒ってしまって……。老人ホームというものに、相当抵抗があるみたいです。
これは、幻冬舎ゴールドオンラインに掲載された記事に登場する、40代独身男性の言葉です(出典)。
自分が働いて稼いだお金で親を支える準備はできている。
けれど、本人が強く拒否する──施設入所は「見捨てられること」だと思っている。
このエピソードを読んで、私は胸がぎゅっと締めつけられるような思いになりました。
なぜなら、私自身も認知症の母に施設入所を提案し、同じように激しく拒絶された経験があるからです。
母は「自分はまとも」と言い張り、認知症の自覚がなかった
私の母も、認知症の進行により日常生活に支障をきたすようになっていました。
冷蔵庫の中には同じ商品が多数、道に迷う、小銭の管理ができない……。
それでも母は、「私はまだ大丈夫」「ボケてなんかいない」と言い張り、
「施設に入れようなんて、ひどい!」と怒鳴ったこともあります。
幻冬舎の記事で紹介されていた男性のお母様も、同じように強い拒否反応を示したそうです。
たとえお金があっても、本人の意志が変わらなければ施設入所は簡単ではありません。
玄関開けっぱなし、火のつけっぱなし…限界を感じた在宅介護
その男性が語っていたことの中に、私は深く共感した部分がありました。
「たまに帰省すると、玄関のドアが開けっ放しだったり、酷いときはコンロの火がつけっぱなしだったりするので」
私の母も同じように、日常生活の中で「もしもの事故」が起きてもおかしくない状態になっていました。
一人暮らしは無理だと判断し、在宅介護を始めましたが、それも限界があります。
介護する側がいくら頑張っても、24時間ずっと目を離さずにいることはできません。
たび重なる早退・欠勤…仕事との両立も崩れ始めた
「親から電話がかかってくると、そりゃ飛んでいきます。本当にクビになってもおかしくないと思いますが、家族のことも放っておけませんし……」
この言葉も、私にとっては他人事ではありませんでした。
迷子になって交番に保護されることもありました。
「介護と仕事を両立する」というのは、言葉で言うほど簡単ではありません。
私の生活そのものが、少しずつ壊れていっている実感がありました。
それでも母は拒み続けた──だから私は、決断した
母がどれほど拒否しても、「このままでは共倒れになる」と思い、私は施設入所を決断しました。
もちろん、本人は怒りました。
「こんなところに閉じ込めるなんて、私は嫌だ!」と、納得してくれませんでした。
けれども、しばらくすると少しずつ落ち着いていき、今では穏やかに過ごしてくれています。
複数の施設を選択肢にすることも大事
参考記事では、老人ホームと一口に言っても様々な種類があることも紹介されていました。
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホーム、特別養護老人ホーム(特養)…
なかでも特養は要介護3以上が原則で、待機者も多く、すぐに入居できるとは限りません。
そのため、早めの検討が重要と感じています。
「このままでは火事が起きるかもしれない」と思ったあの日
「やっぱり、どんな手を使ってでも老人ホームに入居させるしかないんでしょうか。火事でも何でも、事件が起きてからじゃ遅いとは重々承知しています」
これは、記事の最後に紹介されていた男性の言葉です。
私もまったく同じことを思いながら、母の安全と私自身の生活を守るため、決断をしました。
「怒られても責められても、入所させるしかない」──
あのときの判断が正しかったかどうかは、今も完全にはわかりません。
でも、今の母が安心して暮らせていることが、私の中の答えのひとつになっています。
まとめ
親に施設入所を提案して拒否されると、つい「わがまま」「現実が見えていない」と思ってしまいます。
でも、拒否の奥には「自分はまだ大丈夫」「見捨てられるのが怖い」という強い思いがあるのかもしれません。
そして、それでも私たち子ども世代は、親の安全と、自分の生活のバランスをとるために、決断を迫られるときがあるのです。
この記事が、同じように悩んでいる方の気持ちに、少しでも寄り添えれば嬉しいです。
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